妊娠中の注意事項〜妊娠したら気を付けることまとめ

妊娠中に気をつけた方がいいことをまとめました。赤ちゃんを危険な目に遭わせないように妊娠初期から注意するようにしましょう。

葉酸サプリを摂取しよう

葉酸サプリ摂取が勧められている

妊娠2か月目(4~7週目)には脳や脊髄の神経細胞が作られるため、厚生労働省では妊娠する1か月以上前から妊娠3か月までは葉酸を400mg/日摂取することを勧めています。

葉酸はほうれん草、アスパラガス、ブロッコリーなどに含まれていますが、熱で分解されやすく、また実際に体に有効に働くのは50%のみです。なので食事だけから十分な量の葉酸を摂ることは非常に難しいのです。

日本及び諸外国では、妊娠希望あるいは妊娠初期の女性は葉酸のサプリメントを積極的に摂取するよう勧めています。

葉酸摂取不足では歩行障害を来す可能性も

葉酸摂取不足では神経管閉鎖障害を起こす可能性があり、神経管閉鎖障害の中で一番多い疾患の二分脊椎では歩行障害や排尿障害を来します。アメリカやカナダ、南米などの国ではパンやスパゲッティに葉酸を添加した食品を販売するよう義務付けられていて、その結果二分脊椎の発症が50%抑えられたそうです。

日本では葉酸添加食品は義務付けられておらず、自分で葉酸サプリメントを購入して摂取する必要があります。実際に私は二分脊椎や脳瘤などの神経管閉鎖障害の児を多く診てきましたが、ほとんどの母親は葉酸サプリメントの摂取をしていませんでした。

妊娠を希望しているあるいは妊娠の可能性のある人は普段から葉酸の積極的な摂取を心がけましょう。私はピジョンの葉酸・鉄分・ビタミンB群が入っている1日1錠のサプリを妊娠前から授乳期まで飲んでいました。葉酸の摂取が重要なのは妊娠初期ですが、ビタミンB群と鉄分の摂取は妊娠中及び授乳中も必要です。

参考サイト:
厚生労働省 難治性疾患克服事業・研究班 葉酸普及研究会
神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について

魚は何をどのくらい食べればいいのか?

水銀が蓄積するマグロ、キンメダイは食べすぎに注意

大きな魚には食物連鎖によって自然界に存在する水銀が蓄積しますので、マグロやキンメダイは食べ過ぎに注意しましょう。胎児に水銀が移行すると、胎児の脳の発達に影響を与えることが明らかになっています。

具体的に、マグロ、メカジキ、キンメダイ、イルカ、クジラは、一週間にお寿司にすると5貫ぐらいにしておいた方がいいでしょう。

寿司や刺身は食べていい?

寿司や刺身などの生魚は妊娠中に食べていいか気になると思います。一般的には、食中毒の可能性があるので妊婦さんは生食はダメということになっています。私も患者さんに聞かれたら医師として責任を持てないので避けた方がいいと答えると思います。

しかし私は寿司が大好物ですし、今まで寿司や刺身で食中毒になったことがないので、自己責任で妊娠中も食べていました。日本では寿司や刺身はしっかり管理されていて、食中毒になるとしても腸炎ビブリオぐらいなので、万が一かかっても軽い下痢ぐらいで済むと考えました。また、食べるところも、魚を冷凍していない高級寿司はアニサキスなどの危険があるので避けて、今までも食べていて問題なかった安い回転寿司屋を利用していました。

魚を食べると賢くなる

魚はオメガ3脂肪酸(EPA、DHA)が豊富で、オメガ3脂肪酸は神経の発達に欠かせません。脳形成時にオメガ3脂肪酸が不足すると、知的障害になる恐れがあります。

魚を食べていた妊婦の子供の方が、食べなかった妊婦の子供よりも知能が高いことが今までの研究で分かっています。

避けた方がいい食べ物

生肉(生ハム、レアステーキ、ローストビーフ、ユッケなど)

妊娠中は生肉の摂取は控え、ステーキはウェルダンにして、焼肉もよく焼いて食べた方が安心です。生肉摂取はO-157などの大腸菌、リステリア菌、トキソプラズマ、カンピロバクターなどの感染症のリスクになります。

富山県の焼肉チェーン店えびすでの食中毒では、ユッケを食べた妊婦がO-111大腸菌に感染し、帝王切開で早産で出産することになり、その途中で心肺停止にもなりました。O-157やO-111感染症では、腎臓に負担がかかって高血圧になってしまうため、急性の症状が収まってもその後高血圧による後遺症に悩まされることになります。小学生でO-157大腸菌に感染して腎臓に障害が出てしまった症例を小児科医として担当したことがありますが、問診で聞くとチェーン店で焼肉を食べていました。焼肉はどこの店でもしっかり焼かないと本当に危険です。

鶏肉を生で食べるとカンピロバクターに感染するリスクがあります。カンピロバクターは嘔吐・下痢だけの急性症状だけで治癒することがほとんどですが、手足の麻痺が進行してしまうギランバレー症候群になることもあります。

妊娠中にレバ刺しやユッケを食べて子供がトキソプラズマ感染症を発症して右手足に麻痺が出てしまったという記事がありました。あのとき生肉を食べなかったらと一生後悔することにならないように気をつけましょう。

おなかの子に障害 妊娠中の感染が原因 朝日新聞デジタル
妊娠時 寄生虫 “トキソプラズマ”の危険 NHK生活情報ブログ

ナチュラルチーズ、スモークサーモン

スモークサーモンなどの魚介類加工品やナチュラルチーズにはリステリア菌が含まれており、妊娠中にリステリア菌に感染すると胎盤を通して赤ちゃんにも影響が出ることがあると言われています。リステリア菌は塩分にも強く、冷蔵庫でも繁殖するため、スモークサーモンやナチュラルチーズは避けた方がいいでしょう。加熱していれば問題ありませんので、ピザのチーズは食べても大丈夫でしょう。また、日本のナチュラルチーズに関してはメーカーによるとリステリア菌のチェックはしていて妊娠中に食べても問題ないそうです。外国産のナチュラルチーズには気をつけるようにしましょう。プロセスチーズなら加熱してあるので問題ありません。

昆布やワカメなどの海藻類

昆布やワカメなどの海藻類にはヨウ素が含まれていて、ヨウ素を摂りすぎると赤ちゃんの甲状腺機能が低下します。海藻類の食べ過ぎには注意しましょう。

ひじき

ひじきにはヒ素が含まれていて、妊娠中に大量に食べ過ぎることは注意が必要とされています。妊娠中は乾燥ひじき5g(煮物小鉢1杯程度)を週2回までを目安にしましょう。

レバー、うなぎ

レバーやうなぎにはビタミンAが含まれていて、ビタミンAの摂り過ぎは、赤ちゃんの形態異常を引き起こす可能性があると言われています。レバーなら串焼きを週に1本、うなぎは蒲焼きを週に1回までが目安とされています。

生卵

生卵を食べるとサルモネラ菌に感染する恐れがあります。激烈な嘔吐や下痢の症状が出て、胎児に影響を与える可能性があります。卵は生や半熟では食べないで、食べる場合は十分に加熱処理しましょう。

生ガキ

生ガキを生で食べるとノロウイルスに感染するリスクがあります。嘔吐や下痢の症状が出て、胎児に影響を与える可能性があります。カキを食べるときは加熱してから食べましょう。

避けた方がいい嗜好品

アルコール

胎盤を通して赤ちゃんに届き、胎児の成長や発達に影響を与える可能性があるため、妊娠中はアルコールを大量に摂らないようにしましょう。1ヶ月にビールを1,2杯など、少量のアルコールは問題ないと言われています。普段ビールを飲んでいるのであれば、ノンアルコールビールを代わりに飲むといいでしょう。

カフェイン

胎児の発育が阻害される可能性があるため、摂りすぎに注意しましょう。1日にコーヒーなら2杯、紅茶なら3杯、緑茶なら4杯までがカフェイン摂取の目安です。コーヒーを1日にレギュラーサイズ三杯(スターバックスのグランデなら一杯)以内の量なら問題なかったという研究結果があります。たくさんコーヒーを飲みたいのであればたんぽぽ茶を代わりに飲むといいでしょう。

タバコ

タバコを吸うことで赤ちゃんに悪影響を及ぼすことが分かっており、早産や低出生体重児のリスクが高まります。受動喫煙でも副流煙による胎児の影響が考えられ、周囲にも禁煙してもらうようにしましょう。早産では、満期産の子供に比べ、知的障害が4倍、自閉症スペクトラム障害が7倍、脳性麻痺が46倍多いことが分かっています。ADHDのリスクは満期産の子供より80%高くなっています。

避けるべき趣味

猫を飼う、猫を触る

猫に触ると、猫のトキソプラズマ感染症がうつる危険性があります。今までも猫を飼っていたのであれば既にトキソプラズマの抗体を持っている可能性が高いので、問題ありません。妊娠中に初めて猫を飼うことはやめておきましょう。トキソプラズマの抗体を持っているかどうか妊娠初期に血液検査で検査することができます。

ガーデニング(庭いじり)、砂場遊び

ガーデニングや砂場遊びもトキソプラズマの感染の危険があります。今までもガーデニングをしていたという方はまず妊娠初期の検査でトキソプラズマの抗体を確かめてください。トキソプラズマの抗体を既に持っていれば、気にせずにガーデニングを続けられます。トキソプラズマの抗体がない場合は、上の子に付き添って砂場遊びをするのもやめておきましょう。

飲んでいい薬と飲んではいけない薬は?

風邪薬はたいてい飲んでも大丈夫

漢方薬の葛根湯、風邪薬でよく処方されるムコダイン、メジコン、カロナールなどの薬は飲んでも問題ありません。もちろん医師や薬剤師にも妊娠中であることを伝える必要があります。また、風邪をこじらして肺炎になったりしても、ほとんどの抗生剤は妊娠中でも使えます。ミノマイシンやクラビットなどの抗生剤は妊娠中は禁忌となっていて使えません。

飲み続けた方がいい薬

喘息の薬は飲むのをやめてしまうと発作が起きてしまって、その方が胎児への影響が出ますので、きちんと飲み続けましょう。てんかんの薬も、催奇形性のある薬もありますが、同じ薬を飲み続けた方がいいのか、違う薬に変更した方がいいかかかりつけ医師とよく相談しましょう。抗うつ剤も飲み続けた方がいいですので、かかりつけ医と相談が必要でしょう。

飲んではいけない薬

湿布薬や鎮痛薬を妊婦が使うと、胎児の動脈管という血管が収縮してしまいます。ロキソニン、ボルタレン、イブ、モーラスパップ、ロキソニンテープ、インドメタシンクリームなどは使用しないようにしましょう。高血圧の薬や糖尿病の薬もほとんどが禁忌になっています。

感染症に気をつけよう

TORCH症候群とは?

風邪や肺炎では胎児への影響はほとんどありませんが、感染症の中には妊娠中にかかると胎児への影響が出てしまうものがあります。妊娠中の感染によって胎児に奇形または重篤な母子感染症を引き起こす恐れのある感染症を頭文字をとってTORCH症候群と呼んでいます。TORCH症候群は以下の5つです。

Toxoplasmosis(トキソプラズマ症)
Other(その他:B型肝炎ウイルス、パルボウイルスB19、コクサッキーウイルス、EBウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、梅毒など)
Rubella(風疹)
Cytomegalovirus(サイトメガロウイルス)
Herpes simplex virus(単純ヘルペスウイルス)

先天風疹症候群の赤ちゃんが生まれている

風疹は日本では予防接種を受けていない世代である30代が今ちょうど妊娠する時期なので、先天風疹症候群の赤ちゃんが何人も産まれています。妊娠する前に風疹の抗体を調べて風疹の予防接種を受けるべきです。妊娠した後に風疹の抗体がないことが判明した場合は、他の家族に風疹の予防接種を受けてもらうようにし、外出をなるべく控えるようにしましょう。

上の子の残したごはんは食べない方がいい

TORCH症候群の一つのサイトメガロウイルスは風邪の原因ウイルスです。喉の痛みや首のリンパ節が腫れる程度の軽い症状の風邪なのですが、妊娠中にかかると胎児に影響があります。唾液やうんちから感染するので、上の子の残したごはんを食べないようにし、オムツ替えの後に手を洗うようにしましょう。

運動のしすぎはよくない?

激しい運動は切迫早産のリスク

激しい運動をしすぎると切迫早産のリスクになります。切迫早産の原因は感染症などがありますが、ほとんどの原因は不明です。体質とも言われていて、子宮頸管の長さが短くなりやすい人は切迫早産になり、自宅安静や入院が必要になります。体質によりますが、切迫早産になりやすい人は激しい運動は避けた方がいいでしょう。

運動のしなさすぎは妊娠糖尿病のリスク

一方、運動を全くしないと、それはそれで妊娠糖尿病のリスクになります。妊娠中はつい甘いものが食べたくなったりして糖分を摂取してしまい、さらに運動をしないでいると、妊娠糖尿病を発症する可能性があります。妊娠糖尿病も体質なので、親戚に糖尿病の方がいるなど遺伝的に妊娠糖尿病の可能性がある場合は特に気をつけた方がいいでしょう。

妊娠中にできる検査

トキソプラズマとサイトメガロの検査

妊娠初期の感染症の検査として、風疹や梅毒、クラミジアはほとんどの病院で行っています。トキソプラズマやサイトメガロの検査は行わない病院もあり、気になる方は自費になりますが検査を追加してもらった方がいいでしょう。

ダウン症の検査

ダウン症や18トリソミーなどの染色体異常の検査には新型出生前診断(NIPT)や羊水検査などがあります。検査を受けられる週数が限られていますので、早い段階で受けるかどうかよく考える必要があります。もし染色体異常の可能性があると言われたらどうするかを話し合ってから受けるようにしましょう。

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