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子どもを守るために知っておきたいこと

ネット社会では様々な情報を得ることができる代わりに論拠不明な記事が蔓延っていて不安になりますよね。「各分野の専門家が伝える子どもを守るために知っておきたいこと」の本を読んで、気になっていた事柄をまとめてみました。

各分野の専門家が伝える子どもを守るために知っておきたいこと

オススメ度 ★★★★★
読みやすさ ★★★★★
知識量   ★★★★★

参考にしたのは「各分野の専門家が伝える子どもを守るために知っておきたいこと」というメタモル出版から出ている本です。産婦人科医の宋美玄先生や小児科医の森戸やすみ先生などが執筆されています。

産婦人科医の宋美玄先生は「はじめに」の中で、「この本は子どもにまつわる事柄で、多くの人が疑問に思っているだろうことを集め、それぞれの専門家がわかりやすく回答したものです。親だけでなく、多くの大人がリテラシーを身につけ、大切な子どもたちを守れる社会になるよう願っています。」と書かれています。

2016年に出版されたこの書籍は、自然分娩や母乳、ワクチンなどの育児や医学のことから残留農薬や放射能、EM菌まで多岐にわたりインターネットやテレビなどで話題になる事柄について専門家が簡易な言葉で説明していて、大変読みやすく参考になりました。

自然分娩が一番いいの? 産婦人科医 宋美玄

自然分娩とは

「自然に産みたいです」と多くの妊婦さんが答える。自然に産む、つまり帝王切開をしない、陣痛促進剤を使わない、自宅や助産院で産むなど、医療の介入がない出産をしたいということ。

医療の発達

1950年頃の医療が未発達な時代、日本は妊産婦死亡率は出産10万あたり約161人、周産期死亡率(後期死産と早期新生児死亡を合わせた死亡率)は出産1000あたり約45人、つまり出産によってお母さんは約621人に1人、赤ちゃんは約22人に1人が亡くなっていた。現在は妊産婦死亡率は出産10万あたり4人前後、周産期死亡率は出産1000あたり3人前後とかなり改善した。病院での出産が増えたこと、産科医療が進んだことのおかげ。

自然分娩を賛美する専門家たち

「自然分娩でないと」と思う人が多いのは、一部の助産師や産婦人科医に自然分娩を賛美する人たちがいるからだ。自然分娩を賛美する診療所を経営する産婦人科医の吉村正氏や誕生前の胎児に記憶がある(胎内記憶)と主張している産婦人科医の池川明氏など。このような自然分娩を賛美する人たちの中には、効果が否定されているホメオパシーや玄米菜食、その他の危険な代替療法などを広めたりしている人たちもいて注意が必要である。

おすすめ関連本

母乳じゃないとダメ? 産婦人科医 宋美玄

母乳育児にはメリットがあるが、すごく差があるかというとそうでもなく、母乳がよいというのは絶対ではない。

産後の子宮の回復によい

乳首の刺激によってオキシトシンというホルモンが分泌されるため、子宮が収縮しやすく、出血も少なくなる。しかし子宮収縮剤は医師から処方を受けて服用できるため、母乳育児以外に子宮の回復をよくする方法がないわけではない。

体重が早く妊娠前と同じくらいに戻る

母乳だけで育てた場合1日に約500kcalのエネルギーを消費するため、産後の体重減少が促進される。しかし授乳による空腹感から摂取エネルギーも増える可能性があり必ずしも痩せるとは限らない。

排卵が抑えられ、次の妊娠まで間隔をあけることができる

授乳性無月経といって、授乳期間が長ければ1〜2年程度は排卵と月経の再開が抑えられる。しかし出産後最初の月経の前に排卵が起こるため、油断していたら月経が戻る前に妊娠したという例もよくある。

乳がん、子宮体がん、卵巣がんのリスクが低下する

乳がんに関しては子どもの数が多く、母乳育児期間が長いほどリスクが減少し、母乳育児期間12ヶ月ごとに4.3%、子どもの数が増えるごとに7.0%リスクが低下するという報告がある(※1)。卵巣がんについては母乳育児によって22%リスクが減少、子宮体がんについては2週間以上の母乳育児で10%リスクが減少し、最初の母乳育児が30歳以上の場合は50%リスクが減少するという研究もある。つまりこれらのがんの予防には母乳育児がメリットになると言える。しかし母乳育児をしなくても低用量ピルを飲むことで子宮体がんと卵巣がんのリスクは減らすことができるし、ミレーナという子宮内デバイスを使うことで子宮体がんのリスクを減らすことができる。

手間がかからなくてラク

手間や荷物、費用などを考えると母乳育児の方がラクだと言われる。しかし粉ミルクなら頻回授乳に悩むこともないし、父親が育児に参加できるし、赤ちゃんを預けやすいというメリットもある。

感染症のリスクが減少する

母乳だけで4ヶ月以上育てることによって、母乳で育てられなかった場合に比べて乳幼児期に肺炎などの下気道感染症による入院リスクが72%減少するとの報告や量にかかわらず母乳を飲んでいた場合は急性中耳炎になるリスクが23%低下するという報告がある(※2)。このような研究は多数あるが、比較する対照群は完全人工乳であることがほとんどなので混合栄養の赤ちゃんについては分かっていない。

乳幼児突然死症候群(SIDS)が減少する

SIDSのはっきりとした原因は分かっていないが、男児や早産児、低出生体重児に多く、冬や午前中に起こりやすく、両親の喫煙、うつぶせ寝、人工栄養でリスクが高くなることが分かっている。母乳で育つことでSIDSのリスクが36%低下するという研究もあり、その効果は母乳だけで育つほどに高まるので生後6ヶ月まではなるべく母乳で育てるといい(※3)。母乳栄養の方がSIDSが起こりにくい理由としては、母乳は腹持ちが悪くて何度も授乳するために観察する機会が多いこと、乳房を吸うとあごの形が発達することなどが関係しているのではないかと言われている。

アレルギーを予防する

アトピー性皮膚炎の家族歴がある人が完全母乳を3ヶ月以上続けた場合、完全母乳期間が3ヶ月未満である場合よりも、アトピー性皮膚炎の発症が42%少なかったというものや、ぜんそく、アレルギー性鼻炎もリスクが少し下がるというものもある。ただし、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーについては、適切なスキンケアが発症を減らすことも分かってきているので、母乳以外の因子の影響も大きい。

小児糖尿病、肥満のリスクが減少する

子どもの1型糖尿病、2型糖尿病はともに母乳育児によって発症のリスクが下がることが知られている。肥満についても母乳育児による予防効果が示されていて、小児の肥満が約1〜2割減るという研究結果がある。日本の調査でも生後6〜7ヶ月まで母乳だけで育てることによって、7歳時の肥満のリスクが45%減少すると報告されている。ただ、少しでも母乳を与えると効果があるので、完全母乳にこだわらなくても大丈夫である。

知能がよくなる

母乳栄養でIQが高くなるとする研究結果があるが、約5〜8ポイント程度有利なだけであり、またそういった効果は証明されなかったという研究もある。IQに影響する因子は遺伝、生活環境、教育環境など多数あり、母乳だけの影響を評価することは非常に難しいと言える。

早産児に対するメリットは大きい

母乳だけで育てると壊死性腸炎は7割以上も減少し、母乳だけでない場合も母乳の割合が多くなるほどリスクが低下する。遅発性敗血症や未熟網膜症の発症リスクの低下、神経発達がよくなるという研究もある。

参考文献

※1 Collaborative Group on Hormonal Factors in Breast Cancer. “Breast cancer and breastfeeding: collaborative reanalysis of individual data from 47 epidemiological studies in 30 countries, including 50 302 women with breast cancer and 96 973 women without the disease.” The Lancet 360.9328 (2002): 187-195.

※2 Bachrach, Virginia R. Galton, Eleanor Schwarz, and Lela Rose Bachrach. “Breastfeeding and the risk of hospitalization for respiratory disease in infancy: a meta-analysis.” Archives of pediatrics & adolescent medicine 157.3 (2003): 237-243.

※3 Moon, Rachel Y. “SIDS and other sleep-related infant deaths: expansion of recommendations for a safe infant sleeping environment.” Pediatrics 128.5 (2011): e1341-e1367.

おすすめ関連本

体罰って必要でしょうか? 児童精神科医 姜昌勲

体罰のデメリット

体罰にはたくさんのデメリットがあり、絶対にしてはいけない。

・体罰と虐待の区別がつけられない

・体罰はするほうもされるほうも慣れてしまいエスカレートしがち

・体罰を受けた人はそのときの体の傷だけではなく心にも傷が残り、後々まで影響を受ける

・体罰を受けた人は自分が親や指導者になったときに体罰を繰り返してしまう

子どもの指導法

発達障害のある子どもを持つ親向けの指導法「ペアレント・トレーニング」が参考になる。

・子どもの行動を「好ましい(増やしたい)行動」「好ましくない(増やしたくない)行動」「好ましくない行動」「絶対によくない(すぐ止めるべき)行動」の3つにわける。

「好ましい行動」をとったときはすかさず注目して褒め、ポイント表にシールを貼ってポイントを貯めていき、一定のポイントになったらご褒美と交換する。(一つ一つの行動にすぐご褒美をあげるのではなく行動が積み重なってからあげることで、子どもの待つ力を育むことができる)

「好ましくない行動」をとったときは好ましくない言動を無視する。好ましくない言動をエスカレートさせることがある場合、「何をしたらいいのか」を具体的にわかりやすく指示してから無視する。適切な行動を起こしたら無視をやめてすかさず褒める。

「絶対によくない行動」をとった場合はタイムアウトといって子供をその場からいったん離して数分程度ひとりにさせる時間をとる。冷静になったらなぜそのような行動を起こしたのか、次に同じことが起きたらどう振舞うべきかシミュレーションしときにはロールプレイとして練習させる。

おすすめ関連本

ホメオパシーをすすめられました 内科医 NATROM

ホメオパシーとは

「ホメオパシー」とはヨーロッパ発祥の民間療法の一種で、毒物を薄めると毒を打ち消す薬になり、しかも薄めれば薄めるほど効果が強くなるという考え方に基づいている。成分を薄め、その液体を砂糖玉に染み込ませたものをレメディという。何度も繰り返し薄められているためレメディには元の成分は含まれていないので安全で、元の成分の情報が水に記憶されているため効果を発揮すると言われている。

レメディの効果

臨床試験でレメディに似せたニセの薬と比較したところ、差がないことがはっきり分かっている(※1)。レメディには薬効成分が残っていないため効果はないのだ。

亡くなった症例も

赤ちゃんは出血を予防するビタミンKが不足しがちなため、本来は生後すぐにビタミンKのシロップが与えられる。ホメオパシー団体に所属している助産師によって本物のビタミンKではなくビタミンKのレメディを与えられ、生後2ヶ月の赤ちゃんがビタミンK欠乏症による出血で2009年に亡くなった。

自然は安全?

ホメオパシーが受け入れられる背景に、自然は安全で薬や注射は不自然で危険という思い込みがある。医学が発展するまではたくさんの子どもたちが死んでいた。明治時代には1年間における乳児死亡率は1000人あたり約150人だったが、現在は1000人あたり約2人と改善した。本来の自然とは多産多死で、安全ではなかった。自然は安全という誤解に基づいて適切な医療を遠ざけるホメオパシーは危険である

参考文献

※1 Shang, Aijing, et al. “Are the clinical effects of homoeopathy placebo effects? Comparative study of placebo-controlled trials of homoeopathy and allopathy.” The Lancet 366.9487 (2005): 726-732.

おすすめ関連本

ネット情報に惑わされない

初めにとりあげられている3つのテーマについてまとめました。他にも興味深い内容がこの本には書かれています。「紙おむつやナプキンは有害?」「ワクチンは毒?」「フッ素は危ない?」「砂糖や牛乳はよくない?」「マーガリンはプラスチック?」などは、よくネットサーフィンしていると目にする話ですよね。

フッ素は危ない?

フッ素に関して、海外(アメリカやイギリス、中国、韓国んどの25か国)では虫歯予防を目的に水道水にフッ素を添加しているという話は知りませんでした。WHOは「高齢者を含め、あらゆる年齢の人々が、水道水へのフッ素添加によって利益を得る」「水道すへのフッ素添加は虫歯の予防のための最も効果的な公衆衛生的手段である」と述べているんですね。

残留農薬が心配?

残留農薬が心配でオーガニックが安全と思っている方は多いですが、農薬を使わないことのリスクについても述べられています。畑に生える雑草の中には有毒なアルカロイドを含むものがあり、2014年には輸入されたオーガニックベビーフードからナス科のアルカロイドであるアトロピンとスコポラミンが検出されてリコールになったそうです。また、オーガニックの食品はカビ毒汚染が多く、実際にカビ毒のオクラトキシンが検出されて回収されたことがあったそうです。そして、ハーブティーの中にはピロリジジンアルカロイドという強い発がん性物質を含むものがあり、妊婦や乳幼児は飲まないようにとドイツの公的機関は警告しているそうです。

その情報って正しい?

ワクチンや自然分娩などについては医師として知識があったものの、農薬やフッ素のことは知らなかったので、とても勉強になりました。インターネットは大変便利で私もちょっとした調べものにすぐ使ってしまいますが、その情報ってほんと?と疑う目を養うことが大事ですね。そしてネットのどこの誰が書いたか分からない情報より専門家の書いた本をきちんと読むべきだと思います。この本ではおすすめ関連本として色々な本が紹介されていました。上記に挙げたもの以外を一部ここで紹介します。

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